『無職転生』のルーデウスが「気持ち悪い」「キモい」と言われるのは、分からなくもありません。私も最初は、彼の言動に引っかかるところがありました。
それでも、『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』は、続きを読まずにはいられない作品でした。
アニメ第1期の第1クールを見終えたとき、続きが気になって原作を読み始めました。すると、面白くて読む手が止まらなくなり、そのまま本編を最後まで読んでしまいました。蛇足編まで読んだ今も、とても好きな作品です。
ルーデウスには、好きになれない部分があります。それでも、才能だけではどうにもならない状況で、失敗しながら何とかしようとする姿には引き込まれます。
今回は、私がルーデウスに抵抗を感じたところと、それでも『無職転生』を面白いと思う理由を書いてみます。作品への感想から、作者本人への人格攻撃に話が広がることについても、読者としての考えを残しておきたいと思います。
※第1期序盤から魔大陸編までの展開に触れます。物語後半の大きな展開や結末には触れません。
ルーデウスが「気持ち悪い」と言われる理由は、私にも分かります
たとえば、ロキシーの下着をご神体として扱うこと。好きな作品の主人公ではありますが、あの行動まで擁護する気にはなれません。
ルーデウスは、前世の記憶を持ったまま子どもとして生きています。そのため、幼い外見だけを見て、無邪気ないたずらとして受け取ることも難しいです。相手を性的な目で見る言動には、私も最初は抵抗を感じました。
「そういう欠点を持つ主人公なのだ」と理解できても、その描写を楽しめるかどうかは別の話だと思います。設定に理由があるからといって、不快に感じた気持ちがなくなるわけではありません。
ルーデウスが苦手で見るのをやめた、という感想も分かります。そこで「作品を理解していない」と言いたいわけではありません。
ただ、私の場合は、見ていくうちに「この先はどうなるのだろう」という気持ちの方が大きくなっていきました。
『無職転生』はいつから面白くなった? 私はエリスの家庭教師編から
私が特に面白く感じ始めたのは、ルーデウスがエリスの家庭教師になるあたりです。アニメでは、第1期第5話「お嬢様と暴力」から二人の関係が描かれます。
魔法が得意で、頭も回るルーデウスですが、人に何かを教えたり、自分の考えを受け入れてもらったりするのは簡単ではありません。エリスとのやり取りには、能力が高いだけでは話が進まない面白さがありました。
そして、魔大陸に飛ばされてからは、かなりワクワクしながら物語を追っていました。
知らない土地を、エリスとルイジェルドと一緒に進んでいく。ただ移動すれば帰れるわけではなく、出会った人と関わり、そのつど判断しながら旅を続けていきます。世界が広がっていく楽しさもあって、どんどん引き込まれました。
第1期第1クールは、第11話「子供と戦士」で一区切りになります。私はここで続きが待ちきれなくなり、原作に手を伸ばしました。
「いつから面白くなる?」と聞かれたら、私の場合は家庭教師編からです。そこから魔大陸編に入り、さらに夢中になった、という流れでした。
才能があっても最強ではないところが面白い
ルーデウスは、魔法の才能に恵まれています。早くから魔法を覚え、頭を使って状況を動かそうとするところもあります。
それでも、彼より上の相手は出てきます。能力が高いからといって、どんな危機も乗り越えられるわけではありません。うまくいくと思って考えた作戦が、失敗することもあります。
私は、この思いどおりにならないところが、とてもいいと思っています。
たとえば、魔大陸編の「子供と戦士」。Web版の同名の話では、ルーデウスが他の冒険者に恩を売ろうとして救援を遅らせ、救えたはずの命が失われます。魔物を倒せる力があっても、判断を誤れば取り返しのつかないことになる場面です。
その後のルーデウスも、ただ反省して立派になるわけではありません。自分の判断を省みる一方で、他人に都合よく誤解されて、ほっとする気持ちも描かれています。読んでいて、素直に褒められる姿ではないと思います。
もちろん、ここで反省したからといって、失われた命は戻りません。主人公の失敗が、成長のための経験だけでは済まないところに、この物語の厳しさを感じます。
それでも旅は続きます。自分一人ではどうにもならない状況で、別の方法を考えたり、人の力を借りたりしながら、何とか立て直そうとします。
才能があること以上に、うまくいかなかった後にどうするのかが気になります。「今度はどう切り抜けるのだろう」と思いながら、ページをめくっていました。
問題を抱えた登場人物たちの、頑張る姿も見ていたい
『無職転生』を読んでいると、登場人物の多くが、何かしら問題を抱えていたり、変わった部分を持っていたりすると感じます。
序盤のエリスの乱暴さも、家庭教師として関わるルーデウスにとっては大きな壁です。それでも、物語が進むにつれて、最初の印象だけでは語れない人物になっていきます。
嫌だと感じる部分があっても、その人のことをもう少し見ていたくなる。私は、そういうところもこの作品の魅力だと思います。
一方で、ルイジェルドとルーデウスが衝突するのは、単にどちらかに欠点があるからとは限りません。守りたいものや、判断の基準が違うからこそ、ぶつかることもあります。ルーデウスの考えがいつでも通るわけではない関係も、旅を面白くしています。
ルーデウス自身についても、頑張ったから過去の行動が帳消しになるとは思っていません。受け入れられない部分は残ります。
それでも、失敗した後に諦めずに動く姿は評価したいです。欠点を抱えた登場人物たちが、それぞれ懸命に生きています。
すべての言動を好きになれなくても、その人物が歩む物語を楽しむことはできる。私にとって『無職転生』は、そういう作品でした。
作品が合わなくても、作者への人格攻撃にはつなげてほしくありません
ここは、作品の面白さとは別に、はっきり書いておきたいところです。
『無職転生』が合わないなら、無理に読み続ける必要はないと思います。読むのをやめて、別の作品を楽しむという選択肢もあります。私自身は好きですが、誰もが好きにならなければいけない作品だとは思っていません。
「この言動が不快だった」「この描き方には納得できない」と感想や批評を述べることもあるでしょう。作者が選んだ表現について考えるのも、作品を読むことの一つだと思います。
ただ、創作上の人物の言動を根拠に、作者本人まで同じような人間だと決め付けて責めることには、私は強く反対です。
たとえば、「この描写の扱い方に納得できない」という感想と、「こんな人物を書く作者も同類だ」という決め付けでは、話が違ってきます。
問題のある人物を書いたからといって、作者がその行動を現実でも肯定しているとは限りません。
私も、ルーデウスの行動を全部擁護したいわけではありません。それでも物語は面白かったです。その感想と同じように、描かれた人物と作者自身についても、分けて考えてほしいと思います。
苦手なら、作品から離れていい。そこで作者本人を攻撃する必要はないはずです。
ルーデウスを全部肯定できなくても、『無職転生』が好きです
ルーデウスを「気持ち悪い」と感じる理由は分かります。私にも、彼の言動を受け入れにくいと思ったところがありました。
それでも、才能だけでは乗り越えられない壁にぶつかり、失敗しながら何とかしようと動く姿には引き込まれました。問題を抱えた登場人物たちが、それぞれ頑張っているところも好きです。
アニメの続きを知りたくて原作を開いたら、最後まで読む手が止まらなかった。私にとっては、その体験が何より大きいです。
好きになれない部分も含めて読み進めたうえで、やっぱり面白かったと思います。
『無職転生』の考察も書いています
ヒトガミの助言や、老デウスの日記についても、原作を振り返りながら記事にしています。どちらも物語の先の展開を含むため、該当部分まで読んだ方・見た方は、こちらもどうぞ。



