もう一度スクリーンで見られる小津監督の名作

Date:2018年01月17日11時55分 | Category:シネマ | Writer:古山和子
もう一度スクリーンで見られる小津監督の名作

午前十時の映画祭8『麦秋』
■監督:小津安二郎
■出演:原節子、笠智衆、淡島千景ほか
◎2月24日(土)〜3月9日(金)
中洲大洋にて上映










年々映画館から足が遠のいて…テレビでは観てるんだけど”という声を同世代の方から聞くことも多い最近ですが、『午前十時の映画祭』はそういった大人の映画ファンで賑わっています。8年目の締めくくりに登場するのが、日本の名作『麦秋』(2月24日〜2週間上映)と3月上映のアメリカ映画『招かれざる客』(67年のアカデミー賞脚本、主演女優賞)。

 さて、この『麦秋』については改めて紹介する必要もない程多くの評論家や映画ファン達により書かれたり語られたりし続けている小津安二郎監督の代表作の一つですね。何回か観ている私もこのスクリーンでの上映を楽しみにしている一人なんですが、小津映画を初めて観たのは、多分小学校の終わり頃だったかと。恥ずかしながら、かなり退屈だったとしか記憶にないんです、スミマセン。が、一つだけ頭に残ったのが、映し出される画面の感じ。当時いくつも観ていた面白い洋画のスクリーンとは何か違うみたい…。これが後に知った小津監督の、あの有名なロー・ポジションのカメラによる映像のことだったのか!?

 出演俳優も同じ人が多かったり、役柄の名前も同名の別人が何作にも登場したり、俳優たちへの完璧な演技指導などといった独自の製作スタイルを作りあげ、映画人として初の日本芸術院賞を受賞した小津監督。また、昭和38年に60歳で亡くなる迄の晩年に製作した13本、全ての脚本を監督と共同で担当した脚本家、野田高梧も小津作品には忘れられない人ですね。

 その二人が昭和24年の『晩春』に続いて26年に作ったのが『麦秋』。言うまでもなく、その後の『東京物語』と続く“紀子三部作”の二作目で、やはり主演も『晩春』で初出演だった原節子。

 前作と同じく、なかなか結婚しない娘にヤキモキする家族や周りの人々の話なんですが、戦後の東京もかなり落ち着いてきてビルも並ぶ銀座に務める紀子はタイピスト。北鎌倉に住む間宮家は三世代同居の大家族。幸せそうな一家ですが、紀子の次兄は未だ生死も不明のまま戦地から帰らない、という戦争の影を抱えている家族なんです。

在る日職場の上司から紀子に勧められた縁談は好条件で、今度こそはと周りもその気になる中で、紀子自身が決断する彼女の人生とは。

心配する家族に「大丈夫、私きっと幸せになれるわ」と伝える、原節子のあの大きな瞳がいつまでも心に残ります。

 ところでこの映画、固定カメラ一筋の小津監督が唯一クレーンを使ったシーンがあるというのも見所とか。そして監督と原節子のロマンス説が伝わったのも、確か公開直後だったんですよね。


古山和子
RKBアナウンサー時代には「ユーアンドミー」や「ザ・モーニングダイヤル」などを担当。現在もラジオ番組や講演会で映画を中心にしたおしゃべりで活躍中。