「ウィズ・ズート・シムズ」ユタ・ヒップ(56年録音)

Date:2017年11月20日13時01分 | Category:音楽 | Writer:相川 潔
「ウィズ・ズート・シムズ」(56年録音)
ユタ・ヒップ


ブルーノート史上に唯一残る
ドイツ人ピアニストの軌跡


 ブルーノートレーベルは発祥から黒人による演奏を中心に録音されてきたが、創始者アルフレッド・ライオンはドイツ人で、彼と同じドイツ人女性ピアニストを発掘し米国に連れてきた。ユタ・ヒップを「ヒッコリー・ハウス」の専属ピアニストとして紹介する。

 当時西海岸で人気を誇るテナーのズート・シムズのレコードを録音したかったライオンは、ユタ・ヒップ名義のレコードに客演させる手段でトライする。これはまるでキャノンボール・アダレイにマイルス・デイヴィスを客演させたことと同様の作戦である。

 「ジャスト・ブルース」の冒頭からズート・シムズの世界に引き込まれる。迎え撃つユタ・ヒップも力強くリリカルな演奏を展開するが、録音のボリュームも搾られ気味でまさに主役はズート・シムズなのである。「コートにすみれを」の名演はコルトレーンの演奏よりはるかに抒情的で魅力がある。

 ユタ・ヒップはこの録音を最後にジャズ界から引退してしまう。自分の演奏に自信が持てず興味も薄れたといい、米国の市民権を持たなかった彼女は2年後にはドイツに帰国してしまうのだ。


米国ブルーノートの再発売レコードである。米国で4枚程度の録音を残して帰国した彼女にはどれ程の悔いが残ったのだろうか…

相川 潔
元広告会社社員・長崎市生まれ熊本市在住。
ジャズ、ロック、ソウルなどのレコードを追い求めて数十年。名盤、奇盤多数。
レコードは盤、ジャケット、再生機を含めて楽しむべき芸術だと思います。