映画『ドリーム』

Date:2017年09月20日13時01分 | Category:シネマ | Writer:古山和子
映画『ドリーム』
歴史上知られざる、宇宙開発の感動の実話



映画『ドリーム』
監督:セオドア・メルフィ
出演:タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ
配給:20世紀フォックス映画
◎9月29日(金)よりユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、
 TOHOシネマズ福津、シネプレックス小倉 ほかにて公開


 60年代から70年代へと続いた東西冷戦時代の米ソ宇宙開発競争。
 57年ソ連が初の人口衛星スプートニクを打ち上げると、米国は翌年有人宇宙飛行のマーキュリー計画を発表しNASAを設立。しかし61年4月にガガーリンを乗せたボストーク号が人類初の有人飛行に成功。負けられない米国は5月にシェパードによる有人飛行を、そしてケネディ大統領が「60年代に月への有人飛行を実現」と宣言。その後の両国間の熾烈な宇宙競争は大ニュースとして世界中が注目し続けましたね。

 でも、このアメリカの宇宙開発史に、実はほとんど知られていなかった、思いもよらない陰の功労者達がいたんです!というのが今月の映画です。  60年代に入り、ソ連との開発競争に追われる研究現場のエンジニアたちは苛立ちを募らせ、おまけに男性の科学者や数学者の不足にも悩まされていました。

 そんな時、国はヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所で働くあるグループ、瞬時に高度な計算ができるという凄い頭脳の持ち主たちに注目します。なにしろコンピューターのない時代ですからね、ロケットの軌道、再突入の針路を短時間で正確に計算出来る能力は、この現場にはなくてはならないものだったのです。が、そのグループとは、全員女性で、ほとんどがかつて数学の教師だったというアフリカ系の黒人でした。当時のアメリカ南部の州には、依然として根強い差別の現実があり、食事の場もバスの座席も隔離状態、しかも研究所は選ばれた白人男性だけの社会だったのです。

 しかし彼女達の優秀な計算能力を必要とする国は、なかでも幼い頃から天才と言われていたキャサリン・ジョンソンを、ハリソン所長率いる特別研究本部に初の黒人として配属。白人男性だけのオフィス環境は劣悪そのもの。その中で悪戦苦闘する様子は観ているこちらまで腹立だしくなったり、でも時にクスッとするようなエピソードもあったり…。続いて二人の仲間も加わった計算班の目を見張るような活躍が、62年のジョン・グレンによる米国初の地球周回軌道飛行の成功を導いていくのです。

 家庭を持ちながらも、国のため自らの夢のために困難を乗り越えていく3人の女性達のバイタリティ溢れる姿に、本年度アカデミー賞3部門ノミネート、米国内で大ヒットというのも頷けるし、数字や科学には全く疎い私にも魅力いっぱいの映画です。最後に、その後アポロ飛行の月への計算も手掛けたキャサリンご本人、一昨年大統領勲章も受けてご健在なんですよ。

古山和子
RKBアナウンサー時代には「ユーアンドミー」や「ザ・モーニングダイヤル」などを担当。現在もラジオ番組や講演会で映画を中心にしたおしゃべりで活躍中。