『逆立ち日本論』

Date:2017年09月20日13時01分 | Category: | Writer:六百田麗子
『逆立ち日本論』

丸めるな、閉じるな


 棚にずっと置いたままで、読んでいない本が何冊かある。今月とりあげた養老孟司さんと内田樹さんの対談からなる『逆立ち日本論』もその一冊である。片や解剖学者で、虫捕りの名人、片やフランス現代思想を専門とし、合気道の師範である。お二人の対談はきっと歯に衣着せぬもの言いで、さぞおもしろいだろうと思いつつも、一方では、きっと一筋縄ではいかないお話だろうと手にとるのをためらっていた。ただ今年の暑さは尋常ではなく、その異常な暑さにあおられて、思わず手にとってしまった。

 養老先生は、「丈夫な脳をもて」と言い、「ぼくはそれを『丸めるな』と言うのです。丸めてファイルに入れてしまったら、その後の発展性が全くなくなってしまう。問題を抱えたまま辛抱して待たなくちゃいけない。解決は急がなくてよい」と話す。内田さんは、「世界の深さはすべて世界を読む人自身の深さにかかわっている。

 浅く読む人間の目に世界は浅く見え、深く読む人間の目には、世界は深く見える」と言い、お二人とも「閉じるな、適当に決めつけて安心しちゃだめです」と語りかける。「丸めるな、閉じるな」というお二人の言葉は、坐禅の際の警策のように私の身体と心に響いた。
 暑さに疲れた心を整えてもらえた一冊だった。


●『逆立ち日本論』
養老孟司、内田樹 著
新潮選書
1,296円

六百田麗子
昭和20年生まれ。
予備校で論文の講師をする傍ら本の情報誌「心のガーデニング」の編集人として活躍中。