『それでもこの世は悪くなかった』

Date:2017年08月18日13時01分 | Category: | Writer:六百田麗子
『それでもこの世は悪くなかった』

佐藤流幸福論


 日本は戦後72年で急激に高齢化が進み、100歳の長命も珍しいことではなくなった。高齢化が進めば進むほど、人の生き方、死に方が切実な問題になる。現在90歳から100歳の女性のエッセイがベストセラーになり、一大ブームになっているのも頷ける。渡辺和子さん、瀬戸内寂聴さん、篠田桃紅さん、そして佐藤愛子さん。今月は『それでもこの世は悪くなかった』という佐藤愛子さんの講演会をもとにした語りおろしを取り上げた。

「人生というのは、わからないですね。マイナスがあった時に、そのマイナスがあったからこそ後のプラスが生まれたんだということが、長く生きているとわかることがあるんですよ。だから、いまマイナスが来ているからって、ちっとも悲観することはないの。このマイナスがプラスになる時が必ず来るから」。

 大正12年生まれの佐藤さんは結婚してからこの方、筆舌につくし難い苦労に次々と遭遇したけれど、長く生きてみると、「苦しいことがなければ、幸福は生まれないこと。そのかわりその苦労から逃げないこと。逃げないで前に進んでいけばいい」。人生の真理はそこにあるとわかるようになったと書いている。

 佐藤愛子さんが、命懸けで手に入れた幸福論を一冊の本で読めるのも、後に続く世代の幸福だと思う。



●『それでもこの世は悪くなかった』
佐藤愛子 著
文藝春秋
842円

六百田麗子
昭和20年生まれ。
予備校で論文の講師をする傍ら本の情報誌「心のガーデニング」の編集人として活躍中。