東京通信18 南インドカレーブーム

Date:2017年07月20日13時01分 | Category:東京通信 | Writer:小川祥平


南インドカレーブーム

 勤務先の近く、東京・京橋の裏通りにいつも行列ができている店がある。「ダバインディア」という名のカレー屋。惹かれてはいたが、待つのが億劫で入ったことはなかった。ところが先日の昼下がり、通りかかると待ち客は二人ほど。「これはチャンス」と初入店を果たした。
 「ミールス」と呼ばれるランチメニューを頼んだ。円形の大きな銀プレート料理で、中央にはインディカ米のライスが盛られ、その周りを銀の小皿に入れられた数種のカレーが囲んで彩っている。カレーはさらさらタイプ。日本米より水分の少ないインディカ米とよく合う。鶏やマトンのうま味、トマトなどの酸味をスパイスの辛味が引き立てる。
 ちなみにミールスとは、「定食」の意味らしい。インドカレーと言えばナンが添えられるカレーをイメージする人が多いかもしれない。ただ、それは「米より小麦」という内陸の北インドが主。クリーム、ナッツなどを使用し濃厚な北に対して、温暖な南は水分が多く、スパイスをより効かせたものが主流だという。
 
「数年前から南インドカレーがブームですよ」。そう話すのは飲食店プロデューサーの高木賢祐さんだ。高木さんは三年前、都内のカフェを間借りし、さまざまなカレーを週一で提供する「水曜カレー」を始めて人気を集めた(現在終了)。今は、東京・千駄ケ谷でスパイス料理店「HATONOMORI」をプロデュースする。「味は勿論、写真映えすることから若者がSNSで発信して急激に広まった」と振り返る。最近は上の世代にも人気が広がり、百貨店への出店の準備も進めているという。そして高木さんはこうも教えてくれた。「ブームは大阪、東京が中心。『福岡もレベルが高い』と最近聞きますよ」。そんな言葉を裏付けるようなイベントが六月末に都内であった。
 「福岡からの刺客!」と題したカレーのイベントに呼ばれたのは、かつて福岡・高砂で伝説の店「スパイスロード」を営んでいた高田健一郎さんだ。四十八歳の高田さんは二十二年前、勤務していた豪州のレストランで同僚のマレーシア人の料理人が作ったスパイスカレーに衝撃を受け、教えを請うた。二〇〇八年頃、その経験をもとにスパイスロードを開店。その後も、インドへの勉強の旅、豪州のインド料理店での修行などで研鑽を積み、首都圏でも名を知られるほどの大人気店に自店を押し上げた。近年のブームについては「人間って新しい刺激を常に求める。それが今、南インドカレーなのでしょうね」と話す。
 高田さんは三年前に大腸がんが見つかり、店はたたんだ。ただ、今も福岡市内でカレー教室「魁!カレー塾」を定期的に開くなどスパイス料理の狹粗山萋悪瓩和海韻討い襦
「スパイスは和食での醤油のイメージ。調理も簡単で、本を見ながら自宅で作れるのも魅力。そして何より野菜がいっぱい摂れるので健康的。シニア世代の方にもお薦め」とぐらんざ読者にもメッセージをくれた。


東京のイベントでチキンカレーを作る高田さん

文・写真小川祥平
1977年生まれ。西日本新聞東京支社で文化担当記者として勤務。日本酒とラーメンを愛する。