『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』

Date:2017年06月16日16時19分 | Category: | Writer:六百田麗子
『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』

漢字は楽しくてすこし恐い


月とりあげた本は、『白川静さんに学ぶ漢字は楽しい』。漢字は約三千二百年前、中国の安陽(阿南省)に都した殷王朝で、卜いに用いた甲骨文字が始まりという。その漢字の構造を、古代人の死生観をもとに研究したのが白川静さんである。平成18年、96才で亡くなったが、漢字の成り立ちを実に楽しそうに語り、その語る姿は躍動していたと書いている。小中学生にも分かるように、共同通信社、文化部の小山鉄郎さんが、晩年の白川さんとの聞き書きをまとめたのが本書である。

 私にとっての漢字は、生活必需品のひとつのように考えていたが、「漢字の成り立ちには、古代人の、人間を愛し、その人間のいのちを悪霊から守るという意味がある」ことを知るにつけ、改めて漢字への畏敬の念がわいてきた。なかでも「衣」をめぐる漢字の項では、「衣」という文字が深く霊力と関係しているとあり、衣服を身にまとうことは、霊の力を受け継ぐことだという。「衣」は襟から邪気が入らないように、襟元をあわせた形が衣の字形になっていると知ると、衣服を着るという毎日の行為もあだやおろそかにできない気がした。漢字には、神から授かった呪力があるということだろう。

 古代の人の作った漢字の世界に踏みこんだ驚きと、その流れをくむ現代の漢字に、楽しさと恐れを感じた一冊だった。


●『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』
白川静監修 小山鉄郎著
共同通信社
1,080円

六百田麗子
昭和20年生まれ。
予備校で論文の講師をする傍ら本の情報誌「心のガーデニング」の編集人として活躍中。