東京通信17 新横浜ラーメン博物館

Date:2017年06月16日16時09分 | Category:東京通信 | Writer:ぐらんざ編集部

新横浜ラーメン博物館

 福岡は「ラーメンスタジアム」。京都は「拉麺小路」、札幌には「らーめん共和国」がある。今や全国各地に広がるラーメンテーマパークだが、その先駆けは横浜市にある「新横浜ラーメン博物館」だ。一九九四年の開館以来、ご当地ラーメンを首都圏に紹介し、いくつものブームを創り上げてきた「ラー博」を訪れ、近頃のラーメン事情を聞いてきた。

 新横浜駅から徒歩五分の場所に立地、午前十一時のオープン前には開店待ちの行列ができていた。入場料は三百十円(六十歳以上は百円)。昭和三十三年の街並みを再現したレトロな館内ではラーメン店九軒、居酒屋、駄菓子屋などが営業する。迎えてくれたのは岩岡洋志館長(五八)。ぐらんざの読者層を説明すると「お客さんの年齢は三十〜四十代が中心ですけど、『味楽』はシニア世代に受けていますよ」と教えてくれた。

 今年三月にオープンした味楽は、北海道・利尻島の店。十分ほど並んで入店し、一杯を頂いた。シニア世代に人気というからあっさり味を予想していたが、意外にもパワフルな味。焦がし醤油の香ばしさの後に、二十時間かけて煮出されたという利尻昆布のうま味が押し寄せてきた。利尻島では昼二時間半しか営業していない。横浜から約千五百僧イ譟飛行機とフェリーを乗り継いで八時間以上かかる。岩岡館長は「日本で最も食べに行くのが困難なラーメン店。店主の家族が昆布漁師なので高級な利尻昆布をふんだんに使っている。シニアの方にはそのへんが受けているのでしょうか」

 ラー博開館のきっかけは岩岡館長が生まれ育った新横浜の街の活性化だった。休日のビジネス街に人を呼びこもうと、大好きだったラーメンをテーマにした。オープン時の八軒には、その後全国進出を続けることになる福岡市の「博多一風堂」、熊本の老舗「こむらさき」も入った。以来、全国の四十七軒を紹介。旭川、和歌山、徳島など、ご当地ラーメンブームも巻き起こした。

 五年ほど前からはラーメン人気が高まっている海外にも視野を広げる。現在はニューヨークで人気の鮪のアラを使ったツナコツラーメン「YUJIRAMEN」、フランクフルト発の濃厚ラーメン「無垢 muku ツヴァイテ」が館内にのれんを掲げている。いずれも日本人が海外で開業し、人気となった店の逆輸入だ。

 「お金儲けではなく、思い入れのある店を探して、誘致しています」と言う。

 九州中のラーメンを食べ歩いた岩岡館長は九州とも縁が深い。ラー博の隣に商業施設「新横浜ラントラクト」を経営しているが、施設内にある二十五メートルの人工滝は佐賀市の業者とともに創り上げた。「新ご当地ラーメン創生計画」という企画では故・佐野実さんをプロデューサーに、「らぁ麺むらまさ」(唐津市)のオープンを手伝った。

 もうすぐ還暦の岩岡館長だが、守りに入るつもりはない。「六十代は欧州にラー博を作る。七十代は地元の神社の氏子総代になりたいですね」


「半分は地方から、一割は海外のお客さんです」と岩岡洋志館長

文・写真 小川祥平
1977年生まれ。西日本新聞東京支社で文化担当記者として勤務。日本酒とラーメンを愛する。