映画『セールスマン』

Date:2017年06月16日15時59分 | Category:シネマ | Writer:古山和子
映画『セールスマン』
今、世界中が注目のイラン映画が福岡でも




映画『セールスマン』
■監督・脚本:アスガー・ファルハディ 
■出演:シャハブ・ホセイニ、タラネ・アリドゥスティ
■配給:スターサンズ
◎6月24日(土)〜KBCシネマにて公開開始



2月のアカデミー賞授賞式、まぁ信じられないミスがあったり、外国語部門賞のノミネート作品『セールスマン』の監督と主演女優が、トランプ大統領の入国制限令に抗議して出席を拒否したりといったニュースが世界中に発信されました。その二人とは、イランのアスガー・ファルハディ監督と女優のタラネ・アリドゥスティ。今回ご紹介する作品は、その『セールスマン』です。
 ファルハディ監督は『別離』(11)でアカデミー賞をはじめ数々の映画賞を獲得したのでご存じの方も多いかもしれませんね。『別離』は『ナデルとシミン』として、「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」でも観客賞を受賞。映画への規制も大変厳しいイランで製作を続ける監督の『セールスマン』が、いよいよ福岡のスクリーンに登場します。

 主人公はテヘランのアパートに暮らす国語教師エマッドと妻のラナ。二人は小さな劇団に所属し、俳優としても仲良く活動を続ける日々。現在稽古に熱が入っているのがアメリカの劇作家アーサ・ミラーの『セールスマンの死』。ところがある日、日常に異変が。隣で行われている強引な建設工事の影響で、彼らのアパートが突然倒壊の危機にさらされ、住民は緊急避難を迫られます。とりあえず友人が紹介してくれた賃貸のアパートに引っ越してみると、部屋には前の住人が残した派手な女性用の荷物がそのままに。

 芝居の初日を迎えた夜、先に帰宅したラナが自宅で正体不明の侵入者に襲われ頭部に怪我を負い、精神的にも大きなショックを受けます。「警察に行こう」と言う夫と、世間体から夫の言葉を頑なに拒み芝居を続けることを希望する妻。しかし上演中に事件のショックが蘇って取り乱した彼女のせいで公演は中止。次第に夫婦の仲も険悪になり、夫は自分の手で犯人を捜そうとしますが…。無秩序に開発が進む大都市テヘランの実態をベースに、衝撃的なラストへ観る者を引き込んでいく展開です。

 夫婦の関係、文化の違いなど描き方に戸惑いを感じることもあるイスラム圏の映画。でも素晴らしい映画は、そういう枠を乗り越えて世界の人々の胸を打つんですね。

 ところで、イランを代表する映画人と言えば、昨年亡くなったアッバス・キアロスタミ監督。名作『友だちのうちはどこ?』(87)など、キアロスタミ監督の作品11本が7月5日〜16日に福岡市総合図書館シネラ・ホールで上映されます。詳しい上映予定は図書館へお問合せを。新旧イラン映画で胸も熱くなる夏のスタートです。


古山和子
RKBアナウンサー時代には「ユーアンドミー」や「ザ・モーニングダイヤル」などを担当。現在もラジオ番組や講演会で映画を中心にしたおしゃべりで活躍中。