東京通信16 近年続くワイン人気

Date:2017年05月19日13時01分 | Category:東京通信 | Writer:小川祥平


近年続くワイン人気

 十年近く前から日本酒を主に飲んでいるので近年の日本酒ブームは実感している。しかし、国税庁の酒類統計をみると驚いた。全体の消費量は縮小していたのだ(おそらく人気なのは純米酒系だけなのだろう)。一方で右肩上がりのお酒はワイン。二〇〇九年度から連続して増加し、今後も伸長するものとみられている。トレンドを聞こうと専門商社「エノテカ」に連絡すると、タイミングよく新しい店を銀座にオープンしたばかりだった。

 場所は松坂屋跡地一帯を再開発して、四月二十日に開業した「GINZASIX」。高級ブランドを中心に二百以上の店舗が入居し、エノテカを含めてその半数が旗艦店という流行発信地ともいうべき商業施設だ。「脱百貨店」を掲げるだけある。真新しい豪華な建物の吹き抜けには現代芸術家、草間彌生の巨大オブジェがぶら下がる。地下には観世能楽堂もある。

 エノテカもモノを売るだけでなく体験を重視しているようだ。ワインカーブ(貯蔵庫)のような造りの店に入ると、壁には、ピカソ、アンディー・ウォーホルなどのラベルアートが展示されている。フランスボルドー五大シャトーの一つ「ムートン・ロスチャイルド」のワインに貼られたラベルのリトグラフだという。傍にはバーカウンターがあり、美術鑑賞をしながらワインも飲める。

 奥に進むとようやく売り場が現れた。国内最大級。千六百種以上の品揃えは一般的な店舗の五倍で圧巻だ。

 ワインが国内で飲まれ始めたのは一九七〇年代。地ワイン、ボジョレーなどの人気をへて、九〇年代終わりの赤ワインブーム。その後二〇一五年には過去最大の消費量となり、人気は現在も続いている。「チリ、オーストラリアなど『ニューワールド』と呼ばれる新興国の影響ですかね」。シニアソムリエの資格を持つエノテカの漆谷剛さんは教えてくれた。

 特にコストパフォーマンスの良さで人気のチリの勢いはすごい。関税の引き下げもあり、ここ十年ほどで輸入量が急増した。最近はフランス、イタリアをも抜いている。当初はどっしりとしたタイプが多かったが、最近は両国を意識したような軽やかな味わいのものも増えている。

 店内で一番目立つコーナーには、世界的なトレンドというロゼワイン五十種が並んでいた。日本では赤、白が相場だが、漆谷さんによると、フランスでは約三割を占め、白ワインより売れている。ボルドー産「ムートン・カデ」のロゼを頂いた。あわい桜色。滑らかな舌触りながら、適度な酸味、渋みもあった。「ボンレスハム、サーモン、ハムかつ、熟したトマト、和食にも合います。でも日本ではシェア数%。もっと広めたいですね」と漆谷さん。

 同店の客層は五十歳代以上の「昔からワインを飲んできた」世代が中心だという。その世代へのお薦めを教えてもらった。「比較的自由に時間を使える。日差しの良い昼間にきりっと冷やしたスパークリングワインですね」。聞くだけで喉が鳴った。


エノテカ広報担当者は「総務省の統計では福岡市はワイン消費量が全国六位。ワインをよく飲む都市なんです」と話す
ロゼワインが並ぶエノテカGINZA SIX店。


文・写真 小川祥平
1977年生まれ。西日本新聞東京支社で文化担当記者として勤務。日本酒とラーメンを愛する。
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