映画『光をくれた人』

Date:2017年03月14日15時44分 | Category:シネマ | Writer:古山和子
映画『光をくれた人』
世界的ベストセラーの映画化に、涙が滲んで…。



映画『光をくれた人』
監督・脚本:デレク・シアンフランス
出演:マイケル・ファスベンダー、アリシア・ヴィキャンデル、
  レイチェル・ワイズ
配給:ファントム・フィルム
◎5より、T・ジョイ博多/
 TOHOシネマズ直方ほかにて公開



今月は、オーストラリアに暮らす灯台守夫婦の愛の物語です…と言うと、ある年齢以上の日本人なら誰もが思い出すのは木下恵介監督の名作「喜びも悲しみも幾歳月」(昭和32年)。ロケ地の一つで日本最後の灯台守と言われた長崎県五島沖の女島灯台も、10年前に無人化に。オーストラリアの灯台も現在はどうなんでしょうか。
オーストラリア生まれの作家M・L・ステッドマンの原作は世界42ヶ国で翻訳されたベストセラー「海を照らす光」。この本を地下鉄の中で読み、人目も憚らず泣いてしまったと語るのはアメリカの監督デレク・シアンフランス。学生時代から映画を作り、これまではオリジナル脚本で多くの映画祭でも注目される40代の若手。その彼が小説の脚本化に初挑戦した映画です。

 物語は第一次大戦が終了した1918年から始まります。連合軍として多くの兵士を犠牲にしたオーストラリア。西部の港町に一人の帰還兵がやって来て、陸地から160キロも離れ、3ヶ月に一度の定期船しかない無人島にある灯台への勤務を希望。彼、トム・シェアボーンは係官の「楽園とはほど遠い島だ、分かっているのか」との問いかけに「西部戦線よりひどい所はないはずだ」と暗い表情で応えます。戦場で受けた心の傷の深さが観る者の胸に響く映画の冒頭シーンです。

 仮採用の3ヶ月が過ぎ、手続きのため港町に戻った彼が見かけたのはカモメに餌を与える若い女性。彼女は町の有志の娘で明るく活動的なイザベラ。実は彼女も二人の兄を戦争で亡くし、やり場のない悲しみを抱え、生き方を探していたのです。

 心惹かれた彼らは、その後手紙のやり取りで愛を確かめ結婚へ。町で行われた結婚パーティでバンドが演奏する曲は、そう、“ワルツィング・マチルダ”。

 インド洋と南太平洋がぶつかる絶海の孤島生活も、明るい妻を迎えてまさに二人だけの楽園。しかし幸せな生活は続かず、やがて流産、続く死産、悲しみにくれる妻を気遣う日々を過ごすことになるトム。そんなある日、一艘の手漕ぎボートが浜に流れ着き、中には既に息絶えた一人の男と女の赤ちゃんが。お腹がすいたのか泣き出した赤ちゃんを抱き上げる妻。モールス信号でこの事態を伝えようと灯台へ駆け出そうとする夫を必死で止める妻「赤ちゃんを少し休ませてあげたら」と。

 娘を生き甲斐に明るさを取り戻す妻、妻を思う夫、そしてもう一人の…。映画はサスペンスフルなタッチでそれぞれの愛の深さを描いていきます。

 愛することの喜び、苦しみをこんなに美しく観せてくれる映画に久しぶりに出会えた気さえしました。ハンカチもお忘れなく!

古山和子
RKBアナウンサー時代には「ユーアンドミー」や「ザ・モーニングダイヤル」などを担当。現在もラジオ番組や講演会で映画を中心にしたおしゃべりで活躍中。