『もどれない故郷ながどろ 飯舘村帰還困難区域の記録』

Date:2017年03月14日15時37分 | Category: | Writer:六百田麗子
『もどれない故郷ながどろ 飯舘村帰還困難区域の記録』

「までいライフ」
丁寧に、大切に、心を込めてつつましく


平成23年3月11日、東日本震災が発生。さらに東京電力福島第一原発事故がおこり今年で6年、最大40年とされる廃炉にむけ、連日6千人から7千人の人が作業にあたっているという。九州に住み福島の今の状況がわかりにくいと思っていた時、図書館で『もどれない故郷ながどろ飯舘村帰還困難区域の記録』という本に出会った。廃炉にむけ作業がすすむ現状と同時に、忘れてならないのは、ふるさとを去らなければならない帰還困難区域に指定された村があることだ。74世帯・281人の人々が、ふるさとを去る今の正直な気持を吐露して、胸に迫るものがある。地域のコミュニティと豊かな自然が根こそぎ破壊された様子を、「人が消えた集落」「かつてここに暮らしがあった」と記している。

 この本は第一部「写真で見る長泥」と第二部「聞き書きでたどる長泥」の二部構成になっており、とくに「写真で見る長泥」は、日本の山村の原風景を見るようで心奪われた。飯舘村のスローガンは「までいライフ」。「までい」とは、飯舘の言葉で、「丁寧に、大切に、心を込めてつつましく」という意味で、伝統と進歩のバランスのとれた二十一世紀に適応する美しい日本の生活の実現をめざしていたという。飯舘村長泥地区の鎮魂と復活の記録誌として、今私の大切にしたい一冊である。


●『もどれない故郷ながどろ 飯舘村帰還困難区域の記録』
長泥記録誌編集委員会(編集)
芙蓉書房出版
2,592円


六百田麗子
昭和20年生まれ。
予備校で論文の講師をする傍ら本の情報誌「心のガーデニング」の編集人として活躍中。