映画『ラビング 愛という名前のふたり』

Date:2017年02月20日13時01分 | Category:シネマ | Writer:古山和子
「ただ一緒にいたかった」…
アメリカを変えた夫婦の物語



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監督・脚本:ジェフ・ニコルズ
出演:ジョエル・エドガートン、ルース・ネッガ、
  マートン・ソーカス、ニック・クロール
配給:ギャガ
◎3月3日(金)〜KBCシネマにて公開


 皆さんがこのページに目を通して下さる頃は、丁度アカデミー賞が発表される時期ですね。今回ご紹介する映画『ラビング』で主演をつとめたエチオピア生まれのルース・ネッガも女優賞にノミネートされていますが、果たして結果はいかがだったでしょうか?

 振り返れば黒人で最初のオスカー受賞者は『野のユリ』(64年)のシドニー・ポワチエ。64年といえば、公民権法が制定され、アメリカ建国以来続いた人種差別が終わったと言われた年でもありました。ところが今年早々、大統領令に抗議する多くの人々がプラカードに書いたのが“これは人種差別だ!”という文字。そんな中、封切られる『ラビング』、60年近く前のアメリカでの実話を映画化したものです。
 主人公リチャードとミルドレッドが出会って恋におちたのは、58年のバージニア州。二人はこの地で生まれ育ち、リチャードはレンガ職人として勤勉に働き口数も少なく、社交的でもない真面目な若者。そんな彼は恋人の妊娠を知り、嬉しそうにプロポーズをします。しかしミルドレッドは黒人、当時バージニア州では異人種間の結婚は禁じられていました。

 そこで二人はワシントンDCまで出かけて結婚手続きをすませ、地元に戻ってラビング夫妻としての新婚生活をスタート。間もないある夜、突然押し入って来た警官に逮捕された二人の罪状は結婚。執行猶予の条件として出されたのは、離婚あるいは直ちに州を出て25年間一緒には戻れないという判決。
 離婚は考えられないリチャードは身重の妻とワシントンDCでの慣れない都会生活に。5年後、3人の子の世話に追われるミルドレッドがTVで観たのは、キング牧師を中心とした黒人差別反対デモのニュース。彼女は親戚に勧められロバート・ケネディ司法長官に手紙を出し、その手紙は長官からアメリカ自由人権協会に届きます。

 映画はその後、人権協会が依頼した弁護士と州裁判所との闘い、息子の交通事故で故郷に戻り人目を避けてひっそりと暮らす一家の様子が描かれますが、裁判は結局67年の最高裁判決までいきます。支援を求めるため積極的に取材も受ける妻の陰で、嫌がらせや再逮捕の恐怖を一人で受け止めようとするリチャードの優しさ、妻への愛の深さには何度も涙が…。

 実はこの夫妻の話は一般には知られてはいなかったそうですが08年にドキュメンタリー監督のN・バースキーがミルドレッドの死亡記事を読み、彼女と夫の愛が法律を変えた事を知りドキュメント映画に。その後フィクション長編映画化を企画、プロデューサーの一人に「英国王のスピーチ」の名優コリン・ファースの名も。

古山和子
RKBアナウンサー時代には「ユーアンドミー」や「ザ・モーニングダイヤル」などを担当。現在もラジオ番組や講演会で映画を中心にしたおしゃべりで活躍中。