博多座11月花形歌舞伎 市川海老蔵の“自由形”歌舞伎 『石川五右衛門』

Date:2016年09月20日13時01分 | Category:コンサート・演劇・イベント | Writer:眸輝樹
博多座11月花形歌舞伎
市川海老蔵の“自由形”歌舞伎 『石川五右衛門』



『石川五右衛門』市川海老蔵(平成27年1月 新橋演舞場)


 十一月は特別企画の短期公演を除き長期の一般公演での海老蔵の博多座出演は丸五年振りになると思う。前回は今は亡き團十郎との親子共演で歌舞伎十八番の『勧進帳』だった。その後彼の周囲を取り巻く環境は大きく変わり今や市川宗家の総帥として一廻りも二廻りも大きく成長したと思う。

 その海老蔵が今回演じるのは演題ともなっている『石川五右衛門』だ。平成二十一年八月、新橋演舞場で初演、今回が四演目となる新作歌舞伎だ。これは多彩なペンネームで作家活動をし、「マンガの目で見た市川海老蔵」などの著書もある漫画原作者の樹林伸と海老蔵がタッグを組み従来の歌舞伎にとらわれない自由な歌舞伎を企画意図して制作したもの。初演には父團十郎も相手役としてつき合ったのでいわばこの“自由形”歌舞伎にパスポートを与えたものと考えられる。とにかく天下の大泥棒石川五右衛門と豊臣秀吉が実は父子だという設定からして私がいう自由形だ(古典歌舞伎には二人が幼なじみだったという筋立てもあるので本来歌舞伎というのは自由な演劇なのである)。

 さてタイトルロールの海老蔵五右衛門を包囲する主要な役々は中村獅童、片岡孝太郎、市川右近の三人が扮する。偶然にもこの三人は今年の博多座には各々二度目の登場だ。

 まず獅童はこれも“自由形”歌舞伎の一つ『六本木歌舞伎』他で共演、名バッテリーを組んでいる。今回は中国の族長ワンハンを演じ五右衛門と対峙する大きな役どころで扮装も大時代な中国衣裳や化粧で錦絵さながらを見る思いである。このワンハンと対決するため五右衛門は中国に渡り大立ち廻りも見せる。

 続く孝太郎はお茶々の役。本来なら秀吉の側室のはずだがここでは五右衛門との間に子までなすという設定。お茶々がワンハンの命で中国に連れ去られたのを追って五右衛門が大陸に渡る派手なストーリー展開だが、お茶々は昔ながらの歌舞伎のお姫様のつくりなのも逆に新鮮だ。

 右近はこれが右近としては最後の博多座出演だ。というのも来年一月には久しく途絶えていた関西の名跡、市川右團次を三代目として襲ぎ新しく眦莢阿箸靴凸臀个鬚垢襪らだ。この右近は初演には團十郎がつとめたという秀吉役。三演目の昨年から演じている大役だ。この芝居は澤 屋一門として数々の舞台を踏んだスーパー歌舞伎の3S(ストーリー、スピード、スペクタクル)が前面に押し出された新作歌舞伎なので右近も水を得た魚の気分となるだろう。そしてこの三人の他にも二十一世紀歌舞伎組の元気印の面々が大いに暴れ廻る。また五右衛門ものにはお約束の山門と「絶景かな絶景かな」の名台詞や宙乗りも用意され、エンタメ性充分の新作歌舞伎に仕上っている。
 以上私が“自由形”歌舞伎という由縁である。


従来にない“自由形歌舞伎”に挑む面々。右から中村獅童、市川右近、片岡孝太郎。

石川五右衛門
■出演: 市川海老蔵、中村獅童、市川右近 片岡孝太郎ほか
■日程: 11月3日(木・祝)〜25日(金)
■チケット: A席/18,000円、特B席/15,000円、B席/12,000円、C席/5,000円
■お問合せ:092・263・5555



眸輝樹
演劇エッセイスト。修猷館高校、早稲田大学第一文学部(演劇専攻)卒、九州朝日放送入社。テレビ・ラジオ等のプロデューサーを歴任。幼時からの観劇歴は七十数年になるという。